天国からの手紙

勝彦、

お前はあの時「まだ死なれん!」と叫びながら 私をひきちぎった

それまで四十五年 あれほどお前につくして来たのに 何の相談もなく...ひどい奴だ

でも心配すんな 今はそんなこと思ってないぞ

その残った体で頑張っとるもんな グチなんか一度も聞いたことないもんな

それより その残った体で他の人が喜びそうなことはないかと飛び回っている 

いいネ!

お前は切った両手に申し訳ないと折につけ 手を?合わせているが 

反対に私からすれば切られ甲斐があったと思っている

物をつまむ にぎる 冷たい 温かい やわらかい かたい それに手で触る感触

その当たり前が ありがたかったといつも思ってくれてるもんな

手を持ってる人に「あなたはすごい宝物もってますネ」と伝えてるもんな

私達 天国の手の世界では 

「勝彦さんはいい事言うなぁ」 と皆んな手をたたいている

私も鼻が高いぞ

私は火葬場で焼かれる時

「勝彦の人生これで終わったな」

と思ったな

でもその思いをみごとくつ返し生き上がったのが

私の 勝彦 だった

そこから新しい世界が始まり、全く違う道歩いとるもんな

これまで見えぬものは分からん はっきり言わんとわからん 人の気持ちとか知ったことかと 

目先の自分のことばかり考えていた男が...

手で出来ん分 感じる心、ヒラメキ がとぎすまされてナ

人間本来の動物としての大切なものが... よみ返って来たんだろうナ

もっといいのは出逢った「人の似顔絵書き そこに言葉を添える」

楽しみながらの生き方が いつしかそこに見えるものが読みとれるよう になったことだ

うらない師でもなく ただの手無しのオッサンが

「なぜ分かるのですか」「他から聞いてきました 私にも言葉を」

と言われるようになって 

空から見ていてこっちも嬉しくなってナ

でもお前のいい所は 決してその人へのマイナスのことは言わん いや書かんもんな

これから起こるであろう さけたほうがいいですよとか 危ないですよ 

心配ごとをあおって 人集めをし 物を買ってもらって商売する人もいる中 

それはしないのが本当だ

話はちょっとそれるが 

「明日は雨でしょう」 まではいいが 「一週間後は歴史始まって以来の大台風が来ます」

そんな報道をテレビでやっているが あれはおかしい

みんなが計画を中止したり 仕事を休んだり 準備が大変

そしてその当日「台風はそれました 良かったですネ」

なに! どこがよかった 仕事を休みにして 人の動きが止まって 迷惑している人に

どう言い訳するのだ である

あなた顔色が悪いですよ 何かありますよ この薬飲んだ方がいいですよ そんなもんである

いい事をしてやった 言ってやった そこをはき違いしないようにしたいものだ

限られた人生 大切なものを無くすのは辛い事だけど 

そこから始まる新しい出逢い 心にしみる他の人のやさしさ 

これこそ本当に困らないと 素直に受けられぬ 

一番大切なものなのかも知れないナ

自分に出来ることを 必要とされることを 

全力でやる 笑顔で生きる 

それを心に持ってるお前にカンパイだ 

お前の作品 そし生き方を見てると 

俺が切れてやったから 命残されたお前 そしてそこから得た 心からのありがとう 感謝の心が 

「風の丘の美術館」 になり生きている

今日は その 1ページ だ

俺は ずうっと空から見て来たぞ

こんなこと言うのは 最後と思うから言っとくぞ

よかった よかった

そしてお前の作品の 一番のファンは俺 いや私だ

もっともっと喜んでもらえるよう 頑張れ!

  ~切られた天国の両手より~

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